「ふと、」頭をかすめた職場のモヤモヤを、
あなたの知らない扉をそっと押し開けて、
すっきり解消させるブログです。
今夜の話題は…
夜行フェリー(ferry)へのご乗船、
ありがとうございます。
この便は、
「職場の人間関係のもめ事」号です。
貨物を積み上げ次第、出港いたします。

これまで、職場の人間関係をめぐって、
〇【第3回】の「職場の人づき合い」では、
・ 「仲良く」の本義、
・ 君子と小人の違い、
・ 奥義「淡きこと水の如し」を、
〇 【第7回】の「職場との相性」では、
・ 身近な職場で起こる人間関係トラブル、
・ 労働法に登場する「職場」
を取り上げてきました。
一口に、
「職場の人間関係のもめ事」と言っても、
つかみどころがないので、大雑把に、
その対象を絞りましょう。
まず、「職場」におけるもめ事ですから、
・ 企業と従業員との間のいざこざ
・ 企業と労働組合との紛争(労使紛争)
例えば、
・ 賃金の未払いや遅配などの労働基準法上の問題
・ 不当労働行為といった労働組合法上の問題
は除きましょう。
また、「人間関係」のもめ事なので、
会社取引上のトラブルも除きます。
次に、「職場における人間関係のもめ事」を、
どのような観点から分類できるのかを、
頭の中で整理してみましょう。
まず、「職場」のもめ事なので、
社内の職制や社外に着目すると、
上司や部下、同僚、社外の取引先、顧客
との間のもめ事に分けられます。
次に、「人間関係」のもめ事なので、
もめる事柄に着目すると、
人物評価や仕事での言動、懇親会、恋愛など
についてのもめ事に分けられるでしょう。
さてさて、露払いは、このくらいにして…
そこで今夜は、フェリーの展望デッキで、
それらの続編として、
「職場の人間関係のもめ事」について、
思いをめぐらしてみましょう。
それでは、出港いたします。

Table of Contents
1 もめ事の具体例
先ほどの分け方には重なる部分でありますので、
ここでは歯切れよく、思い浮かぶままに、
「職場における人間関係のもめ事」を、
ざっくりと分けてみました。
(1) 上司をめぐる不平不満
職制上の人間関係で避けて通れないのが
上司の存在。
仕事を押し付けてくる上司とは、
部分的に利益相反となる上に、
そばから見ていると、不思議に、
上司の粗(あら、至らない所)が
手に取るように気づくものです。
ありがちな不平不満の例としては、
〇 直属の上司は、口だけ番長で、
仕事を部下に丸投げする。
〇 ライン長は、段取り八分を弁(わきま)えず、
〆切り間近になると、部下が尻ぬぐいをさせられる。
〇 中年の上司は、新卒の部下の恋愛関係に
興味津々な様子。
(2) 部下をめぐる不平不満
見方を変えて、上司にとってみれば、
機転の利く部下がいると仕事がはかどるし、
従順な人柄であれば指示もしやすい。
なので、ありがちな不平不満の例としては、
〇 日頃から、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)
が満足に出来ず、その度に督促しなければならない。
〇 幾度注意しても、反抗的な態度である上に、
同じようなミスを繰り返す。
(3) 同僚をめぐる不平不満
上下関係がなくとも、
職場における人間関係のもめ事は
尽きることがありません。
ありがちな不平不満の例としては、
〇 同年代の同僚が休憩中に社内の噂話ばかりして、
ウマが合わない。
〇 海外旅行のため年休を取ろうとしたら、
途端に同僚が嫌そうな顔になった。
確かに、旅行中に重要な会議が入っているが、
以前からの旅行計画なので仕方ない。
(4) 恋愛をめぐる不平不満
社内恋愛は、職場で咲く華の代表格ですが、
いったんこじれ始めると、花が散り散りになります。
ありがちとは言えない不平不満の例としては、
〇 結婚を前提に付き合っていた職場の彼氏と
別れてしまったが、しばらくして、
元彼には恋人が出来たらしく、
蓮向かいに座って同室で仕事をするはツラい。
〇 職場で二股をかけていたのが、
不覚にも知れ渡ってしまったらしく、
廊下を歩くと、同僚の話が急に止むので、
落ち着いて仕事ができない。
(5) 催しをめぐる不平不満
もともと、親しい間柄でしか
会話をしないような人づき合いですと、
職場の催しが、ことさらにうっとうしくなります。
ありがちな不平不満の例としては、
〇 たいして親しい同僚もいないのに、
親睦会に参加してニコニコなどできない。
〇 休日や祝日に、職場主催のBBQや鍋パーティー
が頻繁に開催されるが、ほっといてほしい。
2 もめ事と労働法との関係
それでは、上記2のもめ事の具体例は、
労働法の問題になるのでしょうか。
そこで、「職場」で起こり得る労働法の問題
として、対人関係でもめやすい、
セクシャルハラスメントとパワーハラスメントを
取り上げてみましょう。
(1) セクシャルハラスメント
〇 雇用の分野における男女の均等な機会
及び待遇の確保等に関する法律
(昭和47年法律第113号)
(職場における性的な言動に起因する
問題に関する雇用管理上の措置等)
第11条 事業主は、職場において行われる
性的な言動に対する
その雇用する労働者の対応により
当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、
又は当該性的な言動により
当該労働者の就業環境が害されることのないよう、
当該労働者からの相談に応じ、
適切に対応するために必要な体制の整備
その他の雇用管理上必要な措置を
講じなければならない。
(第2項から第5項まで 略)
ここで、
セクシャルハラスメントの要件を明らかにするために、
同条第1項を適切に分解し、必要な箇所を取り出すと、
次のようになります。
①「事業主は、」⇒(措置義務の主体)
②「職場において行われる」
⇒(職場+出張先等)
③「性的な言動に対するその雇用する
労働者の対応により」
〔行為の要件1〕
⇒(例えば、拒否や抵抗をされたなど)
④「当該労働者がその労働条件につき
不利益を受け、」
〔行為の要件2①〕
⇒(対価型の例 解雇、労働契約の更新拒否など)
又は、
④「当該性的な言動により当該労働者の就業環境が
害される」
〔行為の要件2②〕
⇒(環境型の例 就業環境が不快となって、
能力の発揮に重大な悪影響が出るなど)
⑤「ことのないよう…」⇒(措置の内容)
(2) パワーハラスメント
〇 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用
の安定及び職業生活の充実等に関する法律
(昭和41年法律第132号)
(雇用管理上の措置等)
第30条の2 事業主は、職場において行われる
優越的な関係を背景とした言動であつて、
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
その雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、
当該労働者からの相談に応じ、
適切に対応するために必要な体制の整備
その他の雇用管理上必要な措置を
講じなければならない。
(第2項から第6項まで 略)
ここで、パワーハラスメントの要件を
明らかにするために、
同条第1項を適切に分解し、
必要な箇所を取り出すと、
次のようになります。
①「事業主は、」⇒(措置義務の主体)
②「職場において行われる」
⇒(職場+出張先等)
③「優越的な関係を背景とした言動であつて、」
〔行為の要件1〕
⇒(抵抗や拒絶することができない蓋然性
が高い関係を背景としてわれるもの)
④「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」
〔行為の要件2〕
⇒(社会通念に照らし、明らかに業務上必要性がない、
又はその態様が相当でないもの)
⑤「その雇用する労働者の就業環境が害される」
〔行為の要件3〕
⇒(労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、
就業環境が不快なものとなったために
能力の発揮に重大な悪影響が生じる等)
⑥「ことのないよう、…」⇒(措置の内容)
(3) 労働法との関係
上記(1)及び(2)で述べたように、
セクシャルハラスメントやパワーハラスメントは、
それぞれの要件が明確になっていて、
上記2の具体例のうち、
(1)の「上司をめぐる不平不満」の中に、
それっぽい事例が見られなくもないですが、
そのまま当てはまるとは言えないでしょう。
もちろん、それも程度問題で、
それらのもめ事が深刻化してゆけば、
セクシャルハラスメントやパワーハラスメントとして、
労働法上の措置義務が生じることもあります。
ところで、このように説明しますと、
同年代の学生でも所属する専攻によって、
考え方にズレが生じます。
法学部ですと、
要件に当てはまるかどうかに神経が集中するので、
「さっきの具体例では、
そもそも、個々の条文の要件に該当しないよ。
これで論点は決着。それじゃ、アミーゴ!」
となります。(なわけないか)
一方、経営学部ならば、組織の存続に頭が向くので、
「職場の人間関係のもめ事が、
業務の遂行を阻害するならば、
労働法の要件に当てはまらずとも、
貴重な経営資源の無駄使いになる。
そうした場合、
どのような人事・労務管理をすべきなのか?」
とくるわけです。(来ないか)
3 もめ事への定石
人事・労務管理の担当者でしたら、
人間関係のもめ事の直面した際に大切なことは、
もめ事に対応する際の普遍的なロジック
を持つことです。
もめ事への対応に似ている、
民事裁判の例を挙げると、
裁判官が判決を下す際の判断(judge)には、
2段階あります。
それは、
「事実認定」と「法的判断」です。
ただ、ここでは、
労働法のまな板にのらない程度の
人間関係の「もめ事」を扱っているので、
厳格な証拠法則に基づく「事実認定」
までは求められず、
通常の「事実の確認」で足りるでしょう。
他方、
「人間関係」のもめ事への対応ですから、
「法的判断」は求められておらず、
人事・労務管理上の
「適切な判断と対処」で足りるでしょう。
これらをまとめると、
次のように言い換えられます。
「事実認定」⇒「事実の確認」
「法的判断」⇒「適切な判断と対処」
併せて、
「事実の確認」や「適切な判断と対処」
に当たっては、
公平(偏っていない)かつ公正(不正がない)
な立場が必要です。
こうしたロジック(枠組み)を土台に据えて、
職場に人間関係のもめ事が生じた際の、
人事・労務管理の担当者の対応を考えると、
① もめ事の当事者や第三者から慎重に聴き取り
を行い、重要な証拠を取りまとめる
② 人事・労務管理上、適切に判断し対処する
という段取りを踏むことになるでしょう。
また、もめ事に直接かかわりのない
周囲の従業員の立場であれば、
① 噂に踊らされず、自ら確認できる事実に
基づいて
② もめ事の本音を推し量り、当事者との間に
相応の距離を置く
という考え方もできるでしょう。
4 流転する職場
小中学校の頃、
次の学年に上がる度にクラス替えが行われ、
誰がクラスメートになるのか気になったものです。
(1) 大人版の教室
職場も教室に似ていて、
とどめなく、従業員が入れ替わります。
職場における人間関係のもめ事も、その時は、
ガチガチにこびりついているように感じますが、
数年のスパン(期間)でとらえると、
周りが異動したり、退職したりして、
人間関係のもめ事も、変幻自在に
移り変わっています。
課室長が異動になっただけで、
職場の雰囲気がガラリと変わることも
珍しくありませんよね。
その意味で、
職場における人間関係のもめ事は、
人の出入りが絶えない職場の
ブラックボックスの中で、
偶然に出会った従業員同士のウマが合わなかった
という不整合なのかも知れません。
(2)「もめ事への定石」の扉
であるならば、
ひとつ一つのもめ事に悩まされることなく、
時の流れを活用しながら、
受け流す手もありますし、
もめ事に対処するロジック(処世術)を身に付けて、
適切に対処することもできるでしょう。
ふと、職場の人間関係のもめ事が気になったら
「もめ事への定石」の扉を、
やんわり押してみましょう。
きっと、あなたらしい未来が適(かな)い
始めるに違いありません。
そろそろ、下船の時間が近づいてきました。
当航は、最終の定期便となります。
次のご乗船の機会をお待ちしています。
この航海を持ちまして、
「ふと、」から始まる第1シーズン(season)
〔第1回~第10回〕が仕納めとなりました。
これもひとえに、皆さまのお蔭です。
本当にありがとうございます。
それではまた、近いうちに、
第2シーズンで、お会いしましょう。
